2006年12月17日

「残業代11.6兆が消える」はウソ? ホワイトカラー・エグゼンプション

(最初に誤解を避けるために言っておきますが、私は同制度の導入には反対です。
 詳しい理由はいずれ記事に書くつもりですが。)


 最近ネット上では、自律的労働時間制度(日本版 ホワイトカラー・エグゼンプション制度)の話題がホットですが、導入に否定的な意見が圧倒的多数のようです。

 ところで、あちこちのブログや掲示板を巡っていて目に付くのは、「残業代11.6兆円が消える」という文。
 いくつかのマスメディアでも、同じことを報じているわけですが・・・。

 残業代なし1千万人に 労働時間規制見直し試算
 http://www.asahi.com/job/news/TKY200611090280.html

 日本的経営は解体の最終局面へ
  「残業代11.6兆円が消失」と試算した牧野・日大経済学部長が斬る
 http://www.nikkeibp.co.jp/news/biz06q4/519809/

 読んでみると、試算を行ったのは牧野富夫・日大経済学部長(労働運動総合研究所 代表理事)とあります。


 じつは拙者、「労働運動総合研究所」という文字を見たとき、ピンと来るものがあったんですね。 
 この牧野教授という方、労組に近い立場の人ではないかと思ったのです。

 はっきり言って、拙者は、左翼とか「リベラル」を自称する人々をあまり信用できません。
 社民党や民主党左派の政治家の言動を見聞きしたり、朝日新聞とか共同通信の記事を読んでいれば、おのずとそうなってしまうのです。
 彼らは明らかに客観的に物事を見る姿勢が欠如していますし、呼吸をするがごとく嘘を吐く人々ですから。


 ・・・それで、今回の統計を見たときも、何か仕掛けがあるのではないかと疑ってみたわけですね。

 で、牧野教授が代表理事をつとめる労働総研のHPに統計の試算方法が載っていたので、調べてみたのですが、案の定、疑問に思うところが3点ほど見つかりました。
(なお、URLは http://www.yuiyuidori.net/soken/ape/2006_1108.html


 まず、労働総研の「試算」内容を簡単にまとめます。

推計の前提

・年収400万円以上のホワイトカラー労働者を新制度の対象とする。
・対象となった労働者は、現在不払いのままとされている残業代の請求権分を失い、使用者に手渡すことになるとする。
・新制度のもとでの賃金体系は不明だが、現在支払われている残業代分も、ゆくゆくは削られるとする。

推計の結果

・制度の導入によって、制度適用者が横取りされる残業代総額は11.6兆円に上る。
・内訳は、7.0兆円が不払い労働(サービス残業)代の横取り額、4.6兆円が所定外労働(支払い残業)代の横取り額である。
・これはホワイトカラー労働者1人当たり、年114万円になる。



 以上を踏まえて、「試算」の問題点について説明します。


1.経団連側の「提言」と制度の適用基準が異なる

「推計の前提」では 制度適用者を「年収400万円以上のホワイトカラー労働者」と仮定。
 ところが、日本経団連側の「提言」のなかでは、年収基準のほかに「労働時間では成果を適切に評価できない業務に従事」という条件が提示されています。
「労働時間では成果を適切に評価できない業務」が具体的に何を示すのかは曖昧なのですが、制度の適用対象者が幾分限定されるのは間違いありません。

 つまり、牧野教授の試算では、制度の対象者がかなり多めに見積もられているということです。
(なお厚生労働省は、12月に入って、対象者の年収下限を8-9百万円程度とする方針を示しています。
 詳しくはコチラhttp://silent-star.seesaa.net/article/29762774.htmlの記事で。)


2.「残業代が削られる」の根拠が示されていない

「試算」では、制度の導入によって、現在発生している「残業代」が全て消えるとの前提になっています。
 ところが、労働市場が流動的か非流動的かで、残業代が削られるか否かは変わることになるのです。
 すなわち、流動的であれば残業代が削られる可能性は低くなり、非流動的であれば残業代が削られる可能性が高くなります。(詳しいことはコチラの記事で。)
 制度の導入によって「残業代が削られる」と主張するならば、労働市場の非流動性を証明する必要があるのですが、資料の中ではそれには触れられていません。


3.11.6兆円には「サービス残業代」が含まれている

「試算」では、現在 年収400万円以上のホワイトカラーの残業によって発生している賃金の総額は、

  支払い残業代 4.6兆円
  不払い残業代 7.0兆円

 とあります。
 これらが、新制度の導入によって消えてしまうと主張しているわけです。

 言うまでもなく、「支払い残業代」とは実際に労働者に支払われている残業代のことなのですが、問題は、もう片方の「不払い残業代」。
「不払いと残業代」とは、分りやすく言えば「サービス残業代」のことですが、じつは現在の制度のもとですでに「横取り」されている(労働者に支払われていない)残業代なのです。
 つまり、11.6兆円のうち7兆円は「制度の導入によって」消えてしまうのではないということになります。


 ・・・長々と書いてきましたが、拙者が言いたいことは、

 @.試算は、制度の導入に反対する者によって行われている。
 A.「残業代11.6兆円」の統計には、誇張が含まれている疑いがある。

 この二点です。


 繰り返しになりますが、拙者はこの制度の導入には反対です。
 理由はそのうちに書こうと思いますが・・・。


 

2006年12月16日

収入800-900万円以上 ホワイトカラー・エグゼンプション制度の対象者

 年収800―900万円以上で調整、労働時間規制の除外対象者
 http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20061216AT3S1501N15122006.html



 厚生労働省は、自律的労働時間制度(日本版 ホワイトカラー・エグゼンプション制度)の導入について、新制度の対象者の年収の下限を800-900万円程度とする方向で最終調整に入るとのことです。

 日本経団連が対象者の年収の下限として求めていたのは、400万円。
 国税庁によると、年収400万円以上の雇用者は約2000万人で、全雇用者の4割程度。

 一方で、900万円以上の年収取得者は全雇用者の5%程度の307万人。
 加えて、@働く時間を自立的に決められる、A管理職である、などの条件を当てはめると、対象者はさらに少なくなります。



 サイト内の参考記事は・・・

 ホワイトカラー・エグゼンプション 厚生労働省が報告案
 http://silent-star.seesaa.net/article/29323837.html

 ホワイトカラー・エグゼンプション 賛成派のねらいは?
 http://silent-star.seesaa.net/article/29377888.html


 

2006年12月14日

「日米では状況が異なる」 ホワイトカラー・エグゼンプション

 昨日に続いて、日本経済新聞12月13日朝刊の25面「経済教室」に、自律的労働時間制度(日本版 ホワイトカラー・エグゼンプション制度)についての論文が掲載されました。

 今回は、制度の導入に慎重な意見をとなえる内容になっています。

 論文の著者は、明治学院大学の笹島芳雄教授。
 興味深い内容ですので、要旨をまとめてみましょう。



 論文では、まず、IT化と成果主義の導入が、自由度の高い働き方の導入を推進していると説明。

 その上で、ホワイトカラー・エグゼンプションを先行して導入している米国では、日本とは異なる以下のような職場環境があると指摘しています。



@.ホワイトカラーは、担当業務を「職務記述書」で明確に規定されている。
「職務記述書」とは、個別の労働者の職務内容を分析・区分した書類のこと。
 全米報酬管理協会の調査では、83%の企業で職務記述書が用意されている。

A.ホワイトカラー自身が担当職務の選択権を持っている。
 ホワイトカラーの企業内の昇給や職務移動は、社内公募により決定される。
 このような制度のもとでは、過酷な業務を伴う仕事には誰も募集しないため、制度適用者への負担に歯止めをかけることが出来る。

B.ホワイトカラーが転職しやすい環境にある
 企業側がホワイトカラーに過度の負担を強いれば、社員は転職という形で負担を避けることが出来る。



 さらに、このような点を踏まえ、日本では労働者の業務内容があいまいであり、長時間労働の温床となる可能性があること、チームワークでの業務が多く、自立的な働き方が困難であることを指摘。

 最後に、制度の導入は「自立的な働き方が可能であるホワイトカラーに限定することが大切」と締めくくっています。


 

2006年12月13日

「労働市場が問題を解決」 ホワイトカラー・エグゼンプション

 12月12日の日本経済新聞 朝刊28面「経済教室」に、自律的労働時間制度(日本版ホワイトカラー・エグゼンプション)の導入に関する論文が掲載されました。

 論文の著者は日本大学助教授の安藤至大氏。

 自律的労働時間制度については、「制度の導入によって、賃金の切り下げや無制限な労働の強制がおこなわれる危険がある」として、労組を中心に反対の声も上がっています。

 本論文では、そのような主張に反論し、制度導入の背景と必要性を訴え、真の労働者保護のために何が必要なのかを、説明する内容になっています。



 以下では、「制度の導入によって労働者に対する不利な待遇が蔓延するか否か」にテーマを絞って、著者の主張をまとめてみようと思います。



 まず著者は、以下の2つの要因により、不利な待遇の蔓延を阻止することが出来ると主張。

@.労働組合の団体交渉
 日本においては、労働者の待遇は労使間の交渉によって決まることになっており、交渉の力を対等にするため、法律によって、労組側に様々な権限を認めている。
 このような条件下では、経営者側による一方的な労働待遇の悪化が起こる可能性は少ない。

A.労働市場における他企業との競争
 企業は労働者の採用市場でも他の企業と競争している。
 仮に、悪い条件で労働者を処遇すれば、ライバル企業によって優秀な人材を引き抜かれる可能性がある。
 このため、企業間の競争が完全な状態ならば、労働者の処遇は適切な水準に保たれることになる。

(ただし、企業間競争を完全な状態に保つためには、透明性の高い契約交渉を奨励し、労働条件を第三者にも見えやすくすることが肝要である。)



 さらに著者は、以上のような2つの要因が作用するには、労働者が転職・離職を合理的に判断できる場合に限られていると指摘。
 しかし現実には、心身両面での不健康から適切な判断を下せない労働者がいることを認めます。

 その上で、こうした人々を保護するために、「週40時間といった医学的根拠のない規制ではなく、データに基づく労働時間規制や健康状態の確認などが必要である」としています。


 

2006年12月11日

賛成派の主張 ホワイトカラー・エグゼンプション

 
 昨日の記事(ココ)に関連した記事です。
 厚生労働省が導入を検討している「自律的労働時間制度」(日本版「ホワイトカラー・エグゼンプション制度」)について、@制度の概要とA導入賛成派の狙いについてまとめてみました。



【@制度の概要】
 労働時間の長さに比例して賃金を決める現行の賃金制度と異なり、仕事の成果を基準に賃金を決める制度。

 厚生労働省が8日にまとめた報告案によると、新制度適用対象者の用件は次の通り。

  @.労働時間の長さで仕事の成果を評価できない業務に従事
  A.権限や責任を相当程度伴う地位にある
  B.仕事の時間配分などを使用者が支持しない
  C.年収が相当程度高い

 また、社員の健康管理の徹底のために、対象者の週休を2日にするよう企業側に義務付け、違反企業には改善命令や罰則を科すとしている。

 新制度は、米国などの「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度がモデル。

 日本経団連などが導入を求めているが、労働組合などは「際限ない労働強化につながる」として強く反発。
 また、経済同友会は、制度の目的自体には賛成しつつも導入は時期尚早との考えを表明している。



【A導入賛成派のねらい その1】
 まず、労働者間の不公平を解消し、企業の生産性向上を促がすことが第一の目的として挙げられます。

 具体的な例をあげて説明してみましょう。

 いま、同じ職場に働くAさんとBさんがいるとしましょう。
 一月あたりの基本給と時間あたりの残業手当は、同じものと仮定します。

 ある月のこと、仕事の能率のいいAさんは、一日平均で2時間しか残業しなかったにもかかわらず、300万円の収益を生み出しました。
 一方、要領の悪いBさんは、一日平均で4時間も残業したあげく、生み出した収益はたったの100万円でした。

 このようなケースの場合、現在の制度のもとでは、Aさんの方が多くの収益をあげているのにも関わらず、多くの賃金が支払われるのはBさんということになります。
 (会社側がAさんの努力に報いる方法といえば、賞与の額に差をつけることくらいでしょう。)

 また、上記のような例のほかにも、意図的にダラダラ残業をして残業手当を大目に貰おうとしている労働者が存在することも考えられます。

 このように、労働者の成果が必ずしも労働時間に比例するわけではないことが分ります。
 制度の導入には、このような不公平を解消し、成果主義を徹底する狙いがあるものと思われます。



【A導入賛成派のねらい その2】
 次に、第二の狙いについて、日経新聞の記事を参考にしながら説明します。

 日経新聞11月9日朝刊では、厚生労働省が制度導入を進めていることについて、「IT化の進展などを背景に労働時間とそうでない時間の境界があいまいな働き方が増えていることが背景」にあると解説しています。

 記事には、そのような「働き方」の具体例はあげられていませんが、たとえば、インターネットやPCを利用した自宅残業などを示すものと思われます。

 現行制度では、労働時間を「会社の指揮・監督下で労働を提供している時間のこと」と定義しており、自宅残業はこの定義に当てはまらないことになっています。
 (自宅残業には残業手当が支給されないということ。)

 つまり、現行制度に定義されている「労働時間」では、会社に対する貢献の度合いを測るのに正確な指標にはならないと言うことです。





 ・・・以上、自律的労働時間制度の概要と、導入賛成派のねらいをまとめてみました。
 導入反対派の主張や、制度を導入した場合に考えられる問題点については、また近い時期に書いてみたいと思います。
 これまた時間がかかりそうだ・・・orz


 

2006年12月10日

厚生労働省が報告案 ホワイトカラー・エグゼンプション

 
 厚生労働省が8日、自律的労働時間制度(日本版ホワイトカラー・エグゼンプション)導入などを含めた新たな雇用ルールについて、報告案を提出しました。



 ここでは、自律的労働時間制度の導入案について、その内容を報道からまとめてみようと思います。

 まず、報告案は、新制度適用対象者の用件として、

  @.労働時間の長さで仕事の成果を評価できない業務に従事
  A.権限や責任を相当程度伴う地位にある
  B.仕事の時間配分などを使用者が指示しない
  C.年収が相当程度高い

 の四点を明示。

 また、社員の健康管理の徹底のために、対象者の週休を2日にするよう企業側に義務付け、違反企業には改善命令や罰則を科すとしています。



 報告書では、年収制限については具体的な金額を明示していませんが、
 日経新聞(12月9日朝刊)によると、経団連側は700万円以上、厚生労働省は1,000万円程度を想定しており、この範囲で調整が進むようです。

 また、労組側は新制度の導入に対して強行に反対してますが、同記事では、「制度の導入を容認する代わりに、残業代の割増率引き上げで譲歩を引き出すことも考えられる」と予測しています。



 自律的労働時間制度については、そのうち別の記事でまとめてみようと思ってます。
 かな〜り時間がかかりそうだけど・・・。


 

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