2007年05月10日

漢の中の漢 〜美しい国の形 02〜

 先日、街の某都市銀行のATMコーナーで見かけた光景です。

 私が預金を下ろそうとしていると、隣のATMコーナーから一人の男性の声が。何やら、係員呼び出し用の電話機で話をしている様子。どうやらクレームをつけている模様です。

 「あ、もしもし?聞こえてとうね?
 さっきからATMの調子がおかしいんだけどね〜。」

 「いや、通帳をいれてみたんだけど、すぐに吐き出しちゃうんだ。
 一体どうなっとるんよ!!」

 「え、何? 今の時間だとキャッシュカードが必要なの?
 そりゃぁ不便だなぁ。」

 「カードは家に置いて来ちゃったんだよねぇ。
 これって何とかならんとかねぇ・・・。」


 まぁ、ここまではフツーの機械音痴さんのクレームといったところです。クレーム係の行員さんのご苦労を思いやりつつ、耳で成り行きを見守りながら、預金引出しの手続きを続けていましたら・・・。

 「おたくの銀行ねぇ、ちょっと支店が少ないんだよね。
 熊本とか鹿児島でも探したんだけど、なかなか見つからなくてさぁ。」

 「じつはワシ、いま自転車で鹿児島から旅をしとってね
 今日福岡についたんやけどね。」

 「いやぁ、道中色んな苦労があったよぉ。
 この前なんか、熊本でねぇ(以下省略)」

 ここに来て、この男性は、明らかに元々のクレームから懸け離れたことを話し始めたのですが・・・。


 ・・・いや!そんなことはどうでも宜しいのです!!


 「鹿児島から福岡まで自転車でやって来たとな!?

 一体何者なんだ、この男はっ??」


 ここで隣のATMコーナーを覗き見ると、汚れだらけのTシャツとジーパンを着た男性老人の姿が。(なお、先ほどから感じていた不思議な異臭の正体がこの男性老人の汗によるものだと気づいたのは、この瞬間のことです。)
 Tシャツには「憲法9条を護れ!」とか、「アメリカ帝国主義を粉砕せよ!!」などといった文字が印刷されています。どうやら「左側」の活動家か何かのようです。
 年のころは70代半ばから後半、身長は150センチちょっと、体格はかなりの痩せ型といったところで、肌は真っ黒に焼けていました。
 見た目といい、さきほどからの聞き取りにくい話しぶりといい、御当人には悪いのですが、けっして風采の上がる感じの人物ではありません。

 ・・・こんないかにもひ弱そうなお爺ちゃんが、鹿児島から福岡までの距離を、あろうことか自転車で走破したというのです。


 この御老人の姿を目にした瞬間の驚愕たるや、私にとって近年まれに見る大きなものでした。十数年前、一人の小学生が自転車だけで日本列島を走破したことがワイドショー等で話題になりましたが(このことをTVで知って、本気で「自分もやりたい!」と言い出し父母を困らせたのは、他ならぬ私でありました)、そのとき以上の衝撃を受けたのです。

 ご老人は、おそらくTシャツに託したメッセージを多くの人々に読んでもらいたいと考え、この自転車の旅を思いついたのでしょう。その行為自体は、(保守主義者を自称する私だけにとりわけ)陳腐なものに感じられました。
 それにも関わらず、私はこの御老人を笑うことは決して出来なかったのです。

 70を過ぎた老人にとって、自転車の長旅はどれだけ過酷なものでありましたろうか。危険なことも数多くあったに違いありません。単なる思い付きで出来るような旅では、断じてありません。私のような若者でさえ困難と思われる長旅を、このご老人はどんな思いで走りつづけたのでしょう。
 私が思うに、御老人の福岡までの道のりを支えつづけたのは、「自らの理想を達成するため、護りたい物を護るためには、いかなる苦痛も危険も厭わない」という彼自身の思いでありましたろう。それも生半端な思いなどではなく、烈火の如く燃え盛る理想の炎、岩のように動かぬ剛直さ、鋼のごとき強靭な意志の力であったに違いありません。


 私は、思想信条は違えども、この御老人への深い敬意を禁じえないと同時に、日頃の我が身の軟弱さを思わずにはおれませんでした。

 21世紀、このような熱き”漢”達が大勢現れることを祈ります。
 きっと日本は、素晴らしい国になるでしょう。


【関連記事】
 恐るべし、最近の女子高生 〜美しい国の形 01〜
 http://silent-star.seesaa.net/article/40232765.html


 
posted by 黙星 at 03:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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